相談業務を通じて、障がいや困難を抱える人たちを幅広く支援

社会福祉士
試験情報

障がい者や高齢者、児童などの社会的弱者が抱えている問題を的確にくみ取り、相談業務を通じて受けられる支援やサービスを提案し、調整していくのが社会福祉士です。加速する高齢化や、育児放棄・児童虐待といった問題が顕在化するなか、その必要性がますます高まっている人気の資格です。

社会福祉士国家試験の試験情報 社会福祉士国家試験の難易度はどれくらい? 社会福祉士国家試験に合格するために必要な勉強時間 おすすめの勉強法と学習費用 まとめ

【最新版】社会福祉士国家試験の情報や難易度、おすすめの勉強方法を解説!

介護施設や福祉施設のほか、医療機関や民間企業、公的機関などで活躍できる社会福祉士の仕事で中心となるのは、相談業務と関係機関との連絡・調整です。

具体的には、障害者や高齢者、児童などの社会的弱者が抱えている問題を的確にくみ取り、相談業務を通じて受けられる支援やサービスの提案や調整を行なうのがおもな仕事になります。

対象者の困難を減らし、自立した生活ができるように支える社会福祉士は、多彩なフィールドで活躍できる国家資格であり、高齢化や児童虐待などが問題となっている現代社会において、必要性が高まっている人気資格です。

そこでこの記事では、社会福祉士を目指すうえで欠かせない国家試験の情報をはじめ、試験の難易度や、おすすめの勉強方法について詳しく解説します。

社会福祉士国家試験の試験情報

社会福祉士国家試験を受けるには、受験資格を取得していることが必要です。試験科目も多く範囲が広いのですが、条件を満たしていれば免除される科目もあります。ここでは受験資格や試験の日程、出題形式などを詳しく解説します。

社会福祉士の試験制度

社会福祉士の試験制度を紹介します。

受験資格
  • (1)4年制大学で指定科目を修めて卒業した方(卒業見込みの方を含む)
  • (2)2年制(又は3年制)短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(又は1年以上)相談援助の業務に従事した方(従事する見込みの方を含む)
  • (3)社会福祉士短期養成施設(6月以上)を卒業(修了)した方(卒業(修了)見込みの方を含む)
  • (4)社会福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(修了)した方(卒業(修了)見込みの方を含む)

なお、福祉系以外の大学・短大に通っていた方や特定の実務経験を積んだ方は、養成施設を通じて受験資格を取得できます。

試験科目(18科目群)
  • (1)人体の構造と機能及び疾病
  • (2)心理学理論と心理的支援
  • (3)社会理論と社会システム
  • (4)現代社会と福祉
  • (5)地域福祉の理論と方法
  • (6)福祉行財政と福祉計画
  • (7)社会保障
  • (8)障害者に対する支援と障害者自立支援制度
  • (9)低所得者に対する支援と生活保護制度
  • (10)保健医療サービス
  • (11)権利擁護と成年後見制度
  • (12)社会調査の基礎
  • (13)相談援助の基盤と専門職
  • (14)相談援助の理論と方法
  • (15)福祉サービスの組織と経営
  • (16)高齢者に対する支援と介護保険制度
  • (17)児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
  • (18)就労支援サービス、更生保護制度

なお、「精神保健福祉士」の国家資格を持ち、「精神保健福祉士」として登録を行なった方(または登録申請中の方)は、受験申込時に必要な書類を提出することで、精神保健福祉士との共通科目である(1)~(11)が免除されます。

試験形式

社会福祉士の国家試験は五肢択一を基本とする多肢選択形式のマークシート方式で、試験科目の18科目群より全150問が出題されます。

配点は1問1点の合計150点満点ですが、試験科目の一部免除を受けた方は、1問1点の合計67点満点となります。

なお、試験時間数は240分で、午前の部と午後の部で実施されます。午前の部では精神保健福祉士との共通科目、午後の部では社会福祉士だけの科目が対象となります。

合格判定

社会福祉士国家試験では、問題の総得点の60%程度を獲得しており、なおかつ18科目群すべてにおいて得点があった方を合格者としています。つまり、1つでも得点できていない科目があった場合、総得点の60%以上の得点を獲得していても不合格です。

なお、共通科目が免除されている方の場合は、それ以外の7科目群すべてで得点する必要があります。

2020年度(令和2年)試験日程

社会福祉士国家試験は、例年2月上旬に実施されており、2021年(令和3年)に行なわれた第33回の試験日程は2021年2月7日(日)です。試験時間は午前の部が2時間15分(135分)、午後の部が1時間45分(105分)の合計240分となっています。

試験地

社会福祉士国家試験は、以下の24試験地で実施されます。

北海道、青森県、岩手県、宮城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県、鹿児島県、沖縄県

受験申込

受験申込書の受付期間は例年9月上旬~10月上旬となっており、2021年度試験の受付期間は2020年9月10日(木)~10月9日(金)でした。

なお、受験申込に関する手続きの詳細は例年7月下旬頃に案内されますので、インターネットまたは郵便はがきで請求して書類を取り寄せる必要があります。

合格発表

社会福祉士国家試験の合格者は例年3月中旬に発表されており、2021年2月7日(日)に実施した第33回試験の合格発表は、2021年3月15日(月)です。

社会福祉士国家試験の難易度はどれくらい?

   

これまでに行なわれた社会福祉士国家試験の合格率や内訳などから、国家試験の難易度がどれくらいなのか見ていきましょう。

社会福祉士国家試験の合格率

<これまでの試験結果>

※横にスクロールしてご覧ください

区分 第28回 第29回 第30回 第31回 第32回
受験者数(人) 44,764 45,849 43,937 41,639 39,629
合格者数(人) 11,735 11,828 13,288 12,456 11,612
合格率(%) 26.2 25.8 30.2 29.9 29.3

(出典:厚生労働省「第32回社会福祉士国家試験合格発表」)

直近の国家試験5回分の結果を見ると合格率は25%~30%程度なので、しっかりと準備をしておかないと合格するのは難しいといえます。

受験資格の取得ルートによって合格率は変わる?

<受験資格別合格者の内訳>

※横にスクロールしてご覧ください

区分 福祉系大学等卒業者 養成施設卒業者
人数(人) 6,586
(7,232)
5,026
(5,224)
11,612
(12,456)
割合(%) 56.7
(58.1)
43.3
(41.9)
100.0
(100.0)

※( )内は第31回の試験結果
(出典:厚生労働省「第32回社会福祉士国家試験合格発表」)

社会福祉士国家試験の合格者のうち、福祉系大学等卒業者と養成施設卒業者の合格率を比較すると、福祉系大学等卒業者は60%弱、養成施設卒業者は40%強でした。

合格率の差はそれほど大きくないため、福祉系大学に通っていない方にも十分合格するチャンスがあるといえるでしょう。

社会福祉士国家試験に合格するために必要な勉強時間

一般的に、社会福祉士国家試験に合格するためには、個人の学力にもよりますが受験資格を取得したのち200~300時間程度の勉強時間が必要だといわれています。

人によっては相談援助の実務に就いていたり、養成施設に通っていたりするため、勉強時間の確保が難しいこともありますが、週1~2日の休みをとりながら1日1時間ずつ勉強する場合であれば、余裕を持った対策ができます。

無理なスケジュールで勉強しても長続きしない可能性があるため、半年~1年くらいの期間を見込んで無理のないスケジュールを立てることをおすすめします。

   

社会福祉士の国家試験は18科目と出題範囲が広く、すべての科目で得点を取らなければなりません。ここでは「試験ではどのようなことが聞かれるのか」について、科目ごとに説明します。

共通科目の試験内容

共通科目とは精神保健福祉士と共通する11科目のことで、精神保健福祉士の国家資格を持っている方は、申込時に申請することで受験を免除されます。

  • (1)人体の構造と機能及び疾病

    この科目では疾患に関する事柄に加えて、国際生活機能分類(ICF)やリハビリテーションの内容についての理解を問われます。出題範囲が広いため過去問に取り組んで、しっかりと出題傾向を押さえることが大切です。

  • (2)心理学理論と心理的支援

    心理学理論による人の理解と心理的支援の技法を学ぶ科目ですが、心理学に関する用語を理解していなければ問題を解くことはできません。「用語をインプットしたら問題を解く」という習慣をつけ、きちんと理解・定着させることが重要なポイントです。

  • (3)社会理論と社会システム

    家族や世帯などに関するテーマに基づいて問われる科目で、家族の形態などに関する出題が多い傾向にあります。比較的取り組みやすい科目であり、出題頻度も高いので得点源にもなります。確実に正解して得点を積み重ねられるように、繰り返し過去問に取り組むのもよいでしょう。

  • (4)現代社会と福祉

    社会福祉の概念と理念、および制度を学ぶ科目です。苦手意識を持つ方も多い科目ですが、社会福祉士試験に合格するうえで、確実に正解すべき問題が必ず出題されています。ニーズ(ニード)に関する問題などが出題されますが、基本をしっかりと理解することが重要なポイントです。

  • (5)地域福祉の理論と方法

    相談援助などを実践するうえで重要な、地域福祉についての理解が問われる科目です。出題範囲が広いため万遍なく勉強しなければなりませんが、相談援助などの実務をイメージすると勉強しやすいでしょう。過去問を繰り返し解いて、見慣れない問題への適応力を身に付けることも大切です。

  • (6)福祉行財政と福祉計画

    「福祉行政・福祉行財政」と「福祉計画」に大別される科目で、地方公共団体の事務や地方財政の状況に関する問題などが多く出題される傾向にあります。法令の条文をしっかり理解すると得点につながりやすいため、繰り返しの復習が重要です。

  • (7)社会保障

    年金・医療保険・社会保険制度など、実生活に関係する社会保障に関する内容が出題されやすい科目です。苦手意識を持つ方も多いようですが、過去問での学習を繰り返し、出題傾向を押さえておくことが大切です。

  • (8)障害者に対する支援と障害者自立支援制度

    この科目では、障害者・障害児に関する制度や法令から出題されるため、過去問を解くだけではなく、解説を読んで理解を深めることが重要です。さらに近年は障害児虐待に関する出題が多いなど時事要素も関連しているため、ニュースや新聞などの情報にも目を向けるようにしましょう。

  • (9)低所得者に対する支援と生活保護制度

    この科目は生活保護制度に関する出題がメインとなるため、試験対策が立てやすい科目といえるでしょう。社会福祉士を目指すなら、「生活保護法の原理・原則」は必ず押さえておきたい部分です。生活保護法の条文を読み、しっかりと復習することがポイントです。

  • (10)保健医療サービス

    保健医療サービスの制度や、医療ソーシャルワーカーに関する内容などが出題される科目です。基本的な内容をしっかりと理解すれば、得点しやすい科目でもあります。保健医療サービスへの理解を深めるためにも、理解できないところは「問題を解いたら解説を読む」ということを繰り返していくとよいでしょう。

  • (11)権利擁護と成年後見制度

    法令に関する問題や、成年後見制度から出題されることの多い科目です。権利擁護は勉強しにくい分野の一つですが、「個人情報」など比較的取り組みやすい部分からまずは理解していきましょう。

専門科目の試験内容

専門科目は社会福祉士を目指すうえで、必ず受験しなければならない科目です。共通科目とは異なり、精神保健福祉士の国家資格を持っている方でも免除にはなりません。

  • (12)社会調査の基礎

    この科目では、保障や保険を中心に学びます。勉強する際は、毎年繰り返し出題されている用語や、論点を理解することが大切な試験対策となります。「問題を解いたら解説を読む」ということを繰り返しながら、ポイント事項を整理することをおすすめします。

  • (13)相談援助の基盤と専門職

    この科目では相談援助に欠かせない知識や、専門職の役割などから出題されます。試験では障害者のための法律やサービスが問われるため、「倫理綱領」と「国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)のソーシャルワークの定義」に必ず目を通しておくことをおすすめします。

  • (14)相談援助の理論と方法

    この科目では、相談援助における実践・理論を中心に出題されます。問題数は21問と多いものの、取り組みやすい内容が多く、得点源にしやすい科目でもあります。社会福祉士試験に合格するためには、高得点を取ることが必須です。

  • (15)福祉サービスの組織と経営

    社会福祉法人や特定非営利活動法人をはじめとする、福祉サービス組織に関わる問題が出題される科目です。基本を押さえて過去問を中心に取り組むことで、高得点を取れる可能性が高いといえます。法令の条文をもとにした出題も多いため、得点力アップを目指すなら条文をしっかり読むことが重要です。

  • (16)高齢者に対する支援と介護保険制度

    介護保険制度や要介護認定の流れや仕組みなど制度の理解度を問われます。この科目は出題範囲が広いため、選択肢の正誤を判断するポイントをしっかり押さえるなどの対策が必要です。

  • (17)児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度

    児童に関する制度や法令、児童福祉の歴史や統計などが出題されます。「児童の定義」など初歩的な問題や事例問題もよく出題されるため、過去問で出題パターンを押さえることが大切です。

  • (18)就労支援サービス、更生保護制度

    就労支援サービスでは、障害者就業・生活支援センターや福祉事務所の就労支援員などの知識が問われます。更生保護制度の出題数は少ないものの、「誰が」行なうのかに着目しながら学習して理解を深めておきましょう。なお、就労支援サービスと更生保護制度からは4問ずつ、計8問出題されます。

社会福祉士試験の出題範囲は広いため、ここまでの試験内容や勉強のポイントを参考に、基本的な事項が出題されやすい科目や、「(14)相談援助の理論と方法」などの得点源になりやすい科目から学習を始めるのもよいでしょう。

おすすめの勉強法と学習費用

   

社会福祉士国家試験の受験資格をお持ちでない方は、まずは、社会福祉士一般養成施設等に通い、受験資格を取得する必要があります。

受験資格を取得済みの方は、受験対策講座を受講することで、より確実な合格を目指すことができます。

一般養成施設や受験対策講座には、通学講座や通信講座があります。自分の状況にあった学習方法で学ぶことが重要となります。

一般養成施設

通学課程

昼間コースや夜間コースがあります。会社やアルバイト等のスケジュールに合わせて、無理なく通える学校を選ぶことが大切です。講義を聴きながら学習を行うことができるので、スムーズに学習を進めることができるうえ、わからない点があれば講師にすぐに質問することも可能です。

また、カリキュラムに沿って効率的に学習できることや仲間がいることで、モチベーションを維持しやすい・挫折しにくいなどのメリットがあります。

費用は約100万円かかるといわれていますが、どこの資格スクールに通うのか、どのコースを選ぶのかによって異なるため、いくつか資料を取り寄せて比較してから決めるとよいでしょう。

通信課程

通学講座に通うことは難しいけど、社会福祉士になりたいという方は、通信課程を受講することで受験資格を取得することができます。

通信課程では、学習のサポート体制や、国家試験の受験に向けた支援体制が学校によって異なるので、教育内容をよく確認してから学校を選ぶことが重要です。

費用の目安は約45万円前後ですが、通信課程を開講している学校やコースにより異なるため、いくつかの資料を取り寄せて比較してから決めることをおすすめします。

受験対策講座(受験資格がある方向け)

社会福祉士国家試験は、試験科目数が多く各科目の学習範囲も幅広いため、効率よく学習を行うことが大切です。確実な合格を目指すために、受験対策講座の受講がお勧めです。

独学

独学の場合は受験対策教材の書籍代だけで済むので、費用を抑えることができますが、どの教材が良いかを自分で調べて購入しなければなりません。

また、独学では疑問点があっても解決するまでに時間がかかることや、モチベーションを維持するのが難しいなど、注意点もあります。

通信講座

学校によって、教材配布のみの講座や講義映像をインターネット等で視聴できる講座があります。また、最近ではオンラインで講義をライブ配信して、通学と同様の感覚で学べるスクールもあります。

費用の目安は、通信講座を開講している学校やコースにより異なるため、いくつかの資料を取り寄せて比較してから決めることをお勧めします。

通学講座

教室で生の講義を受講できるので、臨場感や適度な緊張感を味わいながら集中して学習に取り組むことができます。

講義を聴きながらの学習により効率的に大事なポイントを理解でき、疑問点もその場で解決することができるので、分からないことを残さずに次の学習に進めるのが大きなメリットです。

さらに一緒に学習する仲間がいることはモチベーションを維持しやすく、挫折しにくいなどのメリットがあります。

まとめ

国家資格である社会福祉士は近年必要性が高まっている人気資格ですが、試験の出題範囲が広いこともあり、合格率は28%~30%程度という難関資格です。

試験では18科目すべてで得点があり、全体の60%程度の得点を獲得しなければ合格にならないため、万遍なく学習して苦手科目をつくらないことも重要になってきます。

一般的に社会福祉士試験の合格を目指すには、受験資格を取得したのち200〜300時間程度の学習時間が必要といわれていますが、独学で合格できる可能性は低いため資格スクールへ通うのが現実的です。

資格の大原では、社会福祉士の国家試験合格を目指す講座を開設しており、合格をサポートする3つのポイントがあります。

  • 通学課程、通信課程の両方があり、自分の生活に合わせた講座が選択できる。
  • 学習方法のアドバイスが充実しており、安心して学習することができる。
  • 受講生の個別サポートも充実。

社会福祉士国家試験の合格を目指す受講生を、最後までしっかりとサポートしますので、安心して勉強に集中できます。

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